2020年11月15日日曜日

『サウラ家の人々』


スペインの巨匠カルロス・サウラ監督が長男アントニオを筆頭にした7人の子どもたち1人1人と向き合い、語り合う様子を映し出し、サウラ監督の内面に迫りました。(と書きましたが、1人だけアメリカ在住で、作品に登場しません。残念!)

父親に関係した仕事をしている子どもが多いことにびっくり。妻3人+同棲相手1人で母親はばらばらですが、交流はあるよう。

一緒にいるときはいい父親だったとみんなが口を揃えるように語ります。ただ、家にいないことが多かっただけとのこと。

息子の1人が”そばにいる女性が変わると作風も変わる”と鋭い指摘をしたときには笑ってしまいました。

85歳になっても過去を振り返るのが嫌いで、自分の作品は見直さない。ひたすら前を向いて進んでいこうとする姿勢は素晴らしいと思います。彼の作品を見たことがありませんでしたが、見てみたくなりました。

『10万分の1』



「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の白濱亜嵐と平祐奈主演で人気コミックの実写映画化。キラキラした高校生の恋愛モノのように始まりますが、早々に2人はカップルに。恋の成就がメインテーマではありません。女の子がALSに罹っていることが判明して、それを2人で乗り越えていく話です。

『こんな夜更けにバナナかよ』など、寝たりきりになってしまったALS患者の方の映画は見たことがありますが、少しづつ体の機能が衰えていく頃を描いたものは初めて見ました。こんなことやあんなことができなくなっていくのか!と主人公の辛い気持ちに驚きます。医療が進んで、早く治療法が確立することを祈らずにはいられませんでした。


2020年11月13日金曜日

『天外者』

 


三浦春馬が五代友厚を演じました。2015年に放送されたNHK連続テレビ小説「あさが来た」でディーン・フジオカが演じた「五代様」と比べて、パワフルでやんちゃな感じがします。殺陣もばっちり決まっていました。

坂本龍馬、伊藤博文、岩崎弥太郎と交友があったのですね。展開が早く、いつの間にか明治維新が成し遂げられていました。

三浦翔平の坂本龍馬は明るい若さが弾けていい感じ。森永悠希が演じた利助は伊藤博文になるのですが、伊藤博文って若い頃はこんな感じだったんですね。

「地位か名誉か金か、いや 大切なのは目的だ」と言い切り、前だけを向いていた五代友厚。三浦春馬の演技をもっともっと見たかったと思わせる作品です。


『エポックのアトリエ』



ザ・クロマニヨンズのレコードジャケットを手掛けてきた菅谷晋一さんの仕事ぶりを追ったドキュメンタリー作品です。

本の装幀を手掛けるブックデザイナーの菊地信義を追った『つつんでひらいて』というドキュメンタリー作品のレコードジャケット版といったところでしょうか。

好きなことをやっていたら仕事になった。羨ましいかぎりです。

ザ・クロマニヨンズの「PUNCH」というレコードジャケットがボルト2つが組み合わさったデザインなのですが、なぜボルトなのか。その答えが明らかになるのですが、へぇ~と感心してしまいました。

ザ・クロマニヨンズのファンの方は必見ですね。

2020年11月12日木曜日

『BABYTEETH ベイビーティース』



ガンを闘病中の女子高生が危ない若者に惹かれていきます。親はタトゥーだらけで薬もやっていそうな、その若者を快く思わないのですが、余命いくばくもない娘の笑顔が見たくて、自宅を追い出された彼を自宅に受け入れます。

親の立場として、分かるような、分からないような。

『春江水暖』


http://www.moviola.jp/shunkosuidan/ 

作品の舞台はグー・シャオガン監督が育った中国・浙江省杭州市富陽区。ある大家族の悲喜交々を1年間にわたって描いています。フィクションですが、モデルは監督の叔父夫婦で、登場人物のほとんどを監督の親族が演じています。でも言われなければ俳優が演じていたと思ってしまうくらい、自然でした。特にお金にだらしがなく、悪事に手を染めてしまう三男が秀逸。演技の素人とは思えません。

『天国にちがいない』


https://tengoku-chigainai.com/

エリア・スレイマン監督が自らの出自と同じく、ナザレに住むイスラエル国籍のパレスチナ人を演じ、新作映画の企画を売り込むために、ナザレからパリ、ニューヨークへと出掛けていきます。

どこに行っても、基本的には黙って見つめている主人公。パリでは街を戦車が走り、ニューヨークではスーパーのバイトさえも仕事をしながら銃を背負っています。そんなわけないでしょとツッコミを入れたくなりますが、そんな風に思っている人もいることを誇張して表現したのかしら。

全般的には緩やかなタッチでユーモラスに演出されています。

『ファーストラヴ』



北川景子が髪を切り、デビュー後、初のショートヘアで主演に挑みました。

中村倫也演じる義理の弟とバディを組み、父親殺しで罪に問われている女子大生の心の闇を解き明かしていきます。

互いも心に傷を抱えている2人。事件を通して、自らも過去に向き合い、乗り越えていくのですが、北川景子が演じた主人公の夫役の窪塚洋介が素敵! 大きな愛で妻を包み込んでいます。これまで、どちらかというとエキセントリックな役どころが多かった印象ですが、この役は優しい眼差しで落ち着いた空気を醸し出し、妻を受け止めます。こんな役を演じるように歳を重ねてきたんですね。今作でファンが激増すること間違いなしです。


 





2020年11月11日水曜日

『甦る三大テノール 永遠の歌声』



ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス。

3人の有名オペラ歌手が1990年イタリア、ワールドカップ・サッカーの前夜祭として開催されたローマ、カラカラ浴場で伝説のコンサートを開催しました。そのバックステージ映像などを紡いだドキュメンタリー映画です。

音楽に疎いので、ルチアーノ・パヴァロッティは『パヴァロッティ 太陽のテノール』で知ったばかり。プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスは今回初めて知りました。

映画で聴いても歌声の迫力に圧倒されるので、これを生で聴いたら、すごかったんだろうなと思います。

しかし、お金の匂いに敏感な人たちのよって、伝説のコンサートも金儲けの手段になってしまうのだなぁ。3人のオペラ歌手のみなさんにとっては不本意なことだったのではないかしら。

 




2020年11月10日火曜日

『ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』



ハリウッド音楽業界のベテラントップ歌手グレースの付き人マギーが音楽プロデューサーを目指して悪戦苦闘します。一方、グレースは安定志向のマネージャーやレコード会社に対して新曲を出したいと主張したものの却下され、安定の道を選びます。

自分が正しいと思ったら突き進む主人公の若さが眩しい!!

新しいことにチャレンジしたいけれど、破滅の恐怖よりつまらない安定を選んでしまう40代グレースの辛さには思いっきり共感。年齢的に仕方ないし、何より一度成功したら、手放すのは勇気が必要ですよね。

いったんは決別する2人ですが、かなり後半に「実は。。。」的な話がいくつも重なり、奇跡ともいえる状況に。

女性ががんばって前に進んでいく話はやっぱり見終わったときの気分がいいです。


『記憶の技法』

 


修学旅行のためのパスポート申請で戸籍抄本を手にした主人公。自分が養子であることを知ります。以前から覚えのない光景が頭にフラッシュバックし、意識が飛んでしまうことがあり、自分が何者であるかを調べることに。。。

というストーリーなのですが、主人公は大胆なことをしようとする割りに、高校の別のクラスの男子にいろいろな面で頼りっぱなしで、実はちょっとイラッとしました。

でも、ラストの2ショットで彼女の成長を感じるとともに、イラッとさせられた幼さがあったからこそ、この変化を成長と思えたんだなと妙に納得した自分がいました。

柄本時生くんが金魚屋さんを演じています。彼の辛い境遇はすぐに判明しますが、その後、さらに辛く複雑な思いを吐露するのです。難しい役どころを見事に演じています。さすがだわぁ~

養子の自分には帰るべき家がないと思っていた主人公が養母との絆を感じたシーンは思わず涙がこぼれます。戸田菜穂さん、すっかりお母さん役が板についています。
















2020年10月2日金曜日

『サイレント・トーキョー』



出演は佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也と聞けば、観ないわけにはいきません。しかも、原作は秦建日子の「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」(河出文庫刊)。秦建日子は『アンフェア』シリーズで有名な作家です。メガホンをとったのは『SP』シリーズの波多野貴文監督。
渋谷のスクランブル交差点がテロの標的になり、とんでもない光景が繰り広げられるのですが、その迫力と言ったら、口では説明しきれません。とにかく見てほしいです。
しかし、人物造形が。。。100分を切る作品なので、描き切れていない印象があります。でも、それを超える映像がいくつもあるので、見ても損はないです。


『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』



中山七里の小説「ドクター・デスの遺産」を映画化したクライムサスペンス。安楽死を手口にする連続殺人犯に挑む刑事役綾野剛と北川景子がバディを組みます。2人は「パンク侍、斬られて候」に次いで2度目の共演。「神様のカルテ」「サグラダリセット」などを手がけてきた深川栄洋監督がメガホンをとりました。

作品を見ていると「安楽死も1つの選択なのかもしれない」という思いが頭をもたげてきます。「映画で安楽死を肯定してしまうのってヤバくない?」とハラハラしていると中盤から流れがぐぐっと変わり、辛くても生きることを肯定するようになります。よかった~

綾野剛と北川景子の存在感が大き過ぎて、他の刑事役の俳優が霞んでしまった感があるけれど、個人的にはこの2人が好きなのでOK。

犯人は最初、誰が演じているのかわからないくらい、普段と違った風貌でびっくり。綾野剛との精神的な一騎打ちはさすがのひとこと。怖すぎでしょ。